電磁気学のベクトル演算を初学者向けに解説

電磁気学を勉強し始めると、かなり早い段階で grad 、 div 、 rot 、そしてナブラと呼ばれる記号 \(\nabla\) が登場します。

高校物理では電場や磁場を矢印として考えていたのに、大学の電磁気学では突然、次のような式が並びます。

\[
\nabla \cdot \mathbf{E}=\frac{\rho}{\varepsilon_0}
\]
\[
\nabla \times \mathbf{E}=-\frac{\partial \mathbf{B}}{\partial t}
\]

ここで「\(\nabla\) は何をしているのか」「内積や外積と何が関係しているのか」が分からなくなり、マクスウェル方程式以前に数学で止まってしまう人も多いのではないでしょうか。

この記事では公式を暗記するのではなく、まず「空間の各点に値や矢印が置かれている」という場のイメージから出発します。そのうえでgrad・div・rotがそれぞれ何を測っているのかを、簡単な具体例で実際に計算します。

さらに、局所的な情報であるdivやrotが、ガウスの定理・ストークスの定理によって面全体や経路全体の情報とどう結び付くのかを確認し、最後にマクスウェル方程式へつなげます。

目次

なぜ電磁気学で ベクトル演算 が必要なのか

なぜ普通の微分だけではなく、grad・div・rotのような演算が必要なのでしょうか。

理由は、電場や磁場が「空間の場所ごとに異なるベクトル」だからです。

電場は位置によって向きも大きさも変わるので、

\[
\mathbf{E}=\mathbf{E}(x,y,z)
\]

と表します。位置 \((x,y,z)\) を指定すると、その場所でのベクトルが決まります。このようなものをベクトル場と呼びます。

一方、電位のように場所ごとに一つの数値が決まるものはスカラー場です。

\[
V=V(x,y,z)
\]

電磁気学では、ある一点の値だけでなく、「周囲でどちらへ強くなるのか」「微小領域から湧き出しているのか」「周囲を回り込む傾向があるのか」を知る必要があります。そのための数学がgrad・div・rotです。

ベクトルの例(点電荷の電界ベクトル)

スカラー場 と ベクトル場

スカラー場 は場所ごとに数字が置かれた地図

地形図を考えてみましょう。位置 \((x,y)\) に対して高さが \(h(x,y)\) と決まるなら、これはスカラー場です。気温 \(T(x,y,z)\)、圧力 \(p(x,y,z)\)、電位 \(V(x,y,z)\) なども同じです。

ベクトル場 は場所ごとに矢印が置かれた地図

天気予報の風向・風速図では各地点に矢印があります。一般のベクトル場を

\[
\mathbf{A}(x,y,z)=\left(A_x,A_y,A_z\right)
\]

と表します。電場 \(\mathbf{E}\)、磁束密度 \(\mathbf{B}\)、電流密度 \(\mathbf{J}\) は代表的なベクトル場です。

grad・div・rotが調べるのは、一つの矢印そのものではなく、周囲と比べたときの場の変化です。

ナブラ \(\nabla\) は何を表しているのか

直交座標系ではナブラを

\[
\nabla=\left(\frac{\partial}{\partial x},\frac{\partial}{\partial y},\frac{\partial}{\partial z}\right)
\]

と書きます。

見た目は3成分のベクトルですが、成分には数字ではなく偏微分という操作が入っています。そのため \(\nabla\) はベクトル微分演算子です。

後ろに何を置き、どの演算を組み合わせるかによってgrad・div・rotが現れます。

演算記号入力出力意味
grad\(\nabla V\)スカラー場ベクトル場最も急に増える方向
div\(\nabla\cdot\mathbf{A}\)ベクトル場スカラー場湧き出し・吸い込み
rot\(\nabla\times\mathbf{A}\)ベクトル場ベクトル場局所的な循環

grad (勾配):値が最も急に増える方向

1次元の関数 \(h(x)\) なら、微分 \(dh/dx\) が傾きを表します。しかし2次元や3次元では進む方向を自由に選べるので、傾きを一つの数字だけでは表せません。

そこで、各座標方向の変化率をまとめます。

\[
\operatorname{grad}V=\nabla V
=\left(
\frac{\partial V}{\partial x},
\frac{\partial V}{\partial y},
\frac{\partial V}{\partial z}
\right)
\]

このベクトルは、\(V\) が最も急に増える方向を向きます。

具体例:\(V(x,y)=x^2+2y^2\)

\[
V(x,y)=x^2+2y^2
\]

それぞれ偏微分すると、

\[
\frac{\partial V}{\partial x}=2x,\qquad
\frac{\partial V}{\partial y}=4y
\]

したがって、

\[
\nabla V=(2x,4y)
\]

です。点 \((1,1)\) では、

\[
\nabla V\big|_{(1,1)}=(2,4)
\]

となります。その大きさは、

\[
|\nabla V|=\sqrt{2^2+4^2}=\sqrt{20}=2\sqrt{5}
\]

なので、最急上昇方向の単位ベクトルは、

\[
\frac{\nabla V}{|\nabla V|}
=\left(\frac{1}{\sqrt5},\frac{2}{\sqrt5}\right)
\]

です。

gradのイメージ図

なぜ grad は等高線・等電位面に垂直なのか

微小変位を

\[
d\mathbf{r}=(dx,dy,dz)
\]

とすると、\(V\) の微小変化は、

\[
dV=
\frac{\partial V}{\partial x}dx+
\frac{\partial V}{\partial y}dy+
\frac{\partial V}{\partial z}dz
\]

です。これは、

\[
dV=\nabla V\cdot d\mathbf{r}
\]

と書けます。

等電位面に沿って動く場合は \(dV=0\) なので、

\[
\nabla V\cdot d\mathbf{r}=0
\]

となります。内積が0なので、\(\nabla V\) は等電位面に沿う方向と直交します。

電位 と 電場

静電場では、

\[
\boxed{\mathbf{E}=-\nabla V}
\]

です。マイナス符号は、電場が電位の最も急に下がる方向を向くことを表します。

例えば、

\[
V(x)=10-2x\quad [\mathrm{V}]
\]

なら、

\[
\frac{dV}{dx}=-2\quad [\mathrm{V/m}]
\]

なので、

\[
\mathbf{E}=2\mathbf{e}_x\quad [\mathrm{V/m}]
\]

です。

div (発散):その場所は湧き出しか吸い込みか

ベクトル場

\[
\mathbf{A}=(A_x,A_y,A_z)
\]

に対して、発散は

\[
\operatorname{div}\mathbf{A}
=\nabla\cdot\mathbf{A}
=\frac{\partial A_x}{\partial x}
+\frac{\partial A_y}{\partial y}
+\frac{\partial A_z}{\partial z}
\]

です。

小さな箱を流れの中に置いたと考えると、divは箱から正味でどれくらい流れが出ていくかを、箱の体積を限りなく小さくしながら測った量と考えられます。

  • \(\nabla\cdot\mathbf{A}>0\):湧き出し
  • \(\nabla\cdot\mathbf{A}<0\):吸い込み
  • \(\nabla\cdot\mathbf{A}=0\):正味の湧き出しなし

具体例:\(\mathbf{A}=(x,y,z)\)

\[
\nabla\cdot\mathbf{A}
=\frac{\partial x}{\partial x}
+\frac{\partial y}{\partial y}
+\frac{\partial z}{\partial z}
=1+1+1=3
\]

どの場所でも正なので、一様な湧き出しを持つ場です。

回転しているのにdivが0の例

\[
\mathbf{A}=(-y,x,0)
\]

なら、

\[
\nabla\cdot\mathbf{A}
=\frac{\partial(-y)}{\partial x}
+\frac{\partial x}{\partial y}
+\frac{\partial0}{\partial z}=0
\]

です。矢印は原点の周囲を回っていますが、湧き出しはありません。

電荷 と 電場の発散

真空中のガウスの法則の微分形は、

\[
\boxed{\nabla\cdot\mathbf{E}=\frac{\rho}{\varepsilon_0}}
\]

です。左辺は電場の湧き出し、右辺は電荷密度です。正電荷が電場の源になることを局所的に表しています。

磁束密度については、

\[
\boxed{\nabla\cdot\mathbf{B}=0}
\]

です。通常のマクスウェル方程式では、磁束密度には電荷のような局所的な湧き出し源がありません。

rot (回転):局所的な循環を測る

rotは、

\[
\operatorname{rot}\mathbf{A}=\nabla\times\mathbf{A}
\]

です。成分で書くと、

\[
\nabla\times\mathbf{A}
=\begin{pmatrix}
\frac{\partial A_z}{\partial y}-\frac{\partial A_y}{\partial z}\\
\frac{\partial A_x}{\partial z}-\frac{\partial A_z}{\partial x}\\
\frac{\partial A_y}{\partial x}-\frac{\partial A_x}{\partial y}
\end{pmatrix}
\]

となります。

流れの中に非常に小さな水車を置いたと考えるとイメージしやすくなります。周囲の流速差によって水車を回転させる傾向があればrotは0ではありません。

具体例:\(\mathbf{A}=(-y,x,0)\)

各成分を計算すると、

\[
(\nabla\times\mathbf{A})_x
=\frac{\partial0}{\partial y}-\frac{\partial x}{\partial z}=0
\]
\[
(\nabla\times\mathbf{A})_y
=\frac{\partial(-y)}{\partial z}-\frac{\partial0}{\partial x}=0
\]
\[
(\nabla\times\mathbf{A})_z
=\frac{\partial x}{\partial x}-\frac{\partial(-y)}{\partial y}=1-(-1)=2
\]

したがって、

\[
\boxed{\nabla\times\mathbf{A}=(0,0,2)}
\]

です。回転軸が \(+z\) 方向を向いていることが分かります。

流線が直線でもrotがある

例えば、

\[
\mathbf{A}=(ky,0,0)
\]

では、矢印はすべてx方向を向いています。しかし、

\[
\nabla\times\mathbf{A}=(0,0,-k)
\]

です。上側と下側で流速が異なるため、小さな水車を置けば回転します。

rotのイメージ

電磁気学でのrot

ファラデーの法則は、

\[
\boxed{\nabla\times\mathbf{E}=-\frac{\partial\mathbf{B}}{\partial t}}
\]

です。時間変化する磁場があると、その周囲に循環する電場が生まれることを表します。

アンペール・マクスウェルの法則は、

\[
\boxed{\nabla\times\mathbf{H}
=\mathbf{J}+\frac{\partial\mathbf{D}}{\partial t}}
\]

です。電流や時間変化する電束密度が磁場の循環を作ることを表しています。

線積分:経路に沿った場を足し合わせる

ベクトル場 \(\mathbf{A}\) の中を微小変位 \(d\mathbf{r}\) だけ進むとき、進行方向成分は

\[
\mathbf{A}\cdot d\mathbf{r}
\]

です。経路 \(C\) に沿って足し合わせると、

\[
\int_C\mathbf{A}\cdot d\mathbf{r}
\]

となります。

静電場では、

\[
V(B)-V(A)=-\int_A^B\mathbf{E}\cdot d\mathbf{r}
\]

です。

具体例:一様電場を1 m進む

\[
\mathbf{E}=(3,0,0)\quad [\mathrm{V/m}]
\]

の中を \(x=0\) から \(x=1\,\mathrm{m}\) まで進むと、

\[
\int_A^B\mathbf{E}\cdot d\mathbf{r}
=\int_0^1 3\,dx=3\,\mathrm{V}
\]

なので、

\[
V(B)-V(A)=-3\,\mathrm{V}
\]

です。

面積分:面を貫くベクトル場を足し合わせる

面 \(S\) の単位法線ベクトルを \(\mathbf{n}\) とすると、面を貫く成分は \(\mathbf{A}\cdot\mathbf{n}\) です。

\[
\int_S\mathbf{A}\cdot\mathbf{n}\,dS
\]

は面を貫く総量を表します。閉曲面の場合は、通常は外向き法線を取ります。

ガウスの定理:divと閉曲面を結ぶ

閉曲面 \(S\) が体積 \(V\) を囲むとき、ガウスの定理は、

\[
\boxed{
\oint_S\mathbf{A}\cdot\mathbf{n}\,dS
=\int_V(\nabla\cdot\mathbf{A})\,dV
}
\]

です。

左辺は境界から外へ出る総量、右辺は内部の各点での湧き出しを全部足した量です。

体積を小さな箱に分割すると、隣接する箱の共有面では、一方から出る量がもう一方へ入る量になります。そのため内部面の寄与は打ち消し合い、外側の面だけが残ります。

divのイメージ

具体例:\(\mathbf{A}=(x,y,z)\) を立方体で確かめる

先ほど、

\[
\nabla\cdot\mathbf{A}=3
\]

と求めました。\(-a\le x,y,z\le a\) の立方体の体積は、

\[
(2a)^3=8a^3
\]

なので、体積積分は、

\[
\int_V(\nabla\cdot\mathbf{A})\,dV
=3\times8a^3=24a^3
\]

です。

一方、\(x=a\) 面では、

\[
\mathbf{n}=(1,0,0),\qquad
\mathbf{A}\cdot\mathbf{n}=a
\]

で、面積は \(4a^2\) なので、

\[
\int_{x=a}\mathbf{A}\cdot\mathbf{n}\,dS=4a^3
\]

です。\(x=-a\) 面でも外向き法線を使うと同じく \(4a^3\) になります。

x方向の2面で \(8a^3\)、y方向とz方向も同じなので、

\[
\oint_S\mathbf{A}\cdot\mathbf{n}\,dS
=8a^3+8a^3+8a^3
=24a^3
\]

となり、両辺が一致します。

ガウスの定理とガウスの法則を区別する

ガウスの定理は数学の定理です。一方、ガウスの法則は電磁気学の物理法則です。

積分形のガウスの法則は、

\[
\oint_S\mathbf{E}\cdot\mathbf{n}\,dS
=\frac{Q_{\mathrm{in}}}{\varepsilon_0}
\]

です。電荷密度を使えば、

\[
Q_{\mathrm{in}}=\int_V\rho\,dV
\]

なので、ガウスの定理を使って、

\[
\int_V(\nabla\cdot\mathbf{E})\,dV
=\int_V\frac{\rho}{\varepsilon_0}\,dV
\]

となります。任意の体積について成立するため、

\[
\boxed{\nabla\cdot\mathbf{E}=\frac{\rho}{\varepsilon_0}}
\]

という微分形が得られます。

ストークスの定理:rotと閉曲線を結ぶ

面 \(S\) の境界を閉曲線 \(C\) とすると、

\[
\boxed{
\oint_C\mathbf{A}\cdot d\mathbf{r}
=\int_S(\nabla\times\mathbf{A})\cdot\mathbf{n}\,dS
}
\]

です。

左辺は外周に沿った循環、右辺は面内部の局所的なrotを足したものです。

面を小さな領域に分割すると、隣接領域が共有する辺は逆向きに積分されるため打ち消し合い、最後には外周だけが残ります。

ストークスの定理のイメージ

具体例:\(\mathbf{A}=(-y,x,0)\) を円板で確かめる

この場では、

\[
\nabla\times\mathbf{A}=(0,0,2)
\]

です。xy平面上の半径 \(R\) の円板を考えると、

\[
\int_S(\nabla\times\mathbf{A})\cdot\mathbf{n}\,dS
=\int_S2\,dS
=2\pi R^2
\]

です。

円周を、

\[
\mathbf{r}(\theta)
=(R\cos\theta,R\sin\theta,0)
\]

と置けば、

\[
d\mathbf{r}
=(-R\sin\theta,R\cos\theta,0)d\theta
\]

です。また円周上では、

\[
\mathbf{A}=(-R\sin\theta,R\cos\theta,0)
\]

なので、

\[
\mathbf{A}\cdot d\mathbf{r}
=R^2(\sin^2\theta+\cos^2\theta)d\theta
=R^2d\theta
\]

です。よって、

\[
\oint_C\mathbf{A}\cdot d\mathbf{r}
=\int_0^{2\pi}R^2d\theta
=2\pi R^2
\]

となり、両辺が一致します。

ファラデーの法則とストークスの定理

微分形、

\[
\nabla\times\mathbf{E}
=-\frac{\partial\mathbf{B}}{\partial t}
\]

を面積分すると、

\[
\int_S(\nabla\times\mathbf{E})\cdot\mathbf{n}\,dS
=-\int_S\frac{\partial\mathbf{B}}{\partial t}\cdot\mathbf{n}\,dS
\]

です。左辺にストークスの定理を使えば、

\[
\boxed{
\oint_C\mathbf{E}\cdot d\mathbf{r}
=-\frac{d}{dt}\int_S\mathbf{B}\cdot\mathbf{n}\,dS
}
\]

となります。

右辺の面積分は磁束です。つまり磁束が時間変化すると、その周囲に循環する電場が生まれます。これがコイルに誘導起電力が生じる現象へつながります。

grad・div・rotを組み合わせる

勾配の回転は0

十分滑らかなスカラー場 \(V\) について、

\[
\boxed{\nabla\times(\nabla V)=\mathbf{0}}
\]

です。静電場で

\[
\mathbf{E}=-\nabla V
\]

なら、

\[
\nabla\times\mathbf{E}=\mathbf{0}
\]

となります。

例えばz成分は、

\[
\frac{\partial}{\partial x}
\left(\frac{\partial V}{\partial y}\right)

\frac{\partial}{\partial y}
\left(\frac{\partial V}{\partial x}\right)
\]

です。混合偏微分の順序を交換できれば、

\[
\frac{\partial^2V}{\partial x\partial y}

\frac{\partial^2V}{\partial y\partial x}=0
\]

となります。

回転の発散は0

十分滑らかなベクトル場 \(\mathbf{A}\) について、

\[
\boxed{\nabla\cdot(\nabla\times\mathbf{A})=0}
\]

です。磁気ベクトルポテンシャルを、

\[
\mathbf{B}=\nabla\times\mathbf{A}
\]

と定義すれば、

\[
\nabla\cdot\mathbf{B}
=\nabla\cdot(\nabla\times\mathbf{A})=0
\]

が自動的に満たされます。

ラプラシアン

gradとdivを組み合わせると、

\[
\nabla\cdot(\nabla V)=\nabla^2V
\]

となります。直交座標では、

\[
\boxed{
\nabla^2V=
\frac{\partial^2V}{\partial x^2}
+\frac{\partial^2V}{\partial y^2}
+\frac{\partial^2V}{\partial z^2}
}
\]

です。

ガウスの法則と \(\mathbf{E}=-\nabla V\) を組み合わせると、

\[
\nabla\cdot(-\nabla V)=\frac{\rho}{\varepsilon_0}
\]

なので、

\[
\boxed{\nabla^2V=-\frac{\rho}{\varepsilon_0}}
\]

というポアソン方程式が得られます。電荷がない領域では、

\[
\boxed{\nabla^2V=0}
\]

というラプラス方程式になります。

マクスウェル 方程式をベクトル演算の意味から読む

真空中を意識したマクスウェル方程式は、

\[
\boxed{\nabla\cdot\mathbf{E}=\frac{\rho}{\varepsilon_0}}
\]
\[
\boxed{\nabla\cdot\mathbf{B}=0}
\]
\[
\boxed{\nabla\times\mathbf{E}=-\frac{\partial\mathbf{B}}{\partial t}}
\]
\[
\boxed{
\nabla\times\mathbf{B}
=\mu_0\mathbf{J}
+\mu_0\varepsilon_0\frac{\partial\mathbf{E}}{\partial t}}
\]

です。

最初の2本はdivなので「場の源」を表し、後ろの2本はrotなので「場の循環」を表していると読むことができます。

物理的な読み方
\(\nabla\cdot\mathbf{E}=\rho/\varepsilon_0\)電荷は電場の湧き出し・吸い込みの源
\(\nabla\cdot\mathbf{B}=0\)磁束密度には局所的な湧き出し源がない
\(\nabla\times\mathbf{E}=-\partial\mathbf{B}/\partial t\)時間変化する磁場が循環する電場を作る
\(\nabla\times\mathbf{B}=\mu_0\mathbf{J}+\mu_0\varepsilon_0\partial\mathbf{E}/\partial t\)電流と時間変化する電場が磁場の循環を作る
マクスウェルの方程式

初学者がつまずきやすいポイント

divが0ならベクトル場も0なのか

違います。例えば、

\[
\mathbf{A}=(-y,x,0)
\]

では、

\[
\nabla\cdot\mathbf{A}=0
\]

ですが、

\[
\nabla\times\mathbf{A}=(0,0,2)
\]

です。divが0なのは、場がないのではなく、正味の湧き出しがないという意味です。

rotが0なら場は一定なのか

これも違います。例えば、

\[
V=x^2+y^2
\]

なら、

\[
\mathbf{A}=\nabla V=(2x,2y,0)
\]

は場所によって変化しますが、

\[
\nabla\times\mathbf{A}=\mathbf{0}
\]

です。

rotは見た目が円形の場だけに現れるのか

いいえ。\(\mathbf{A}=(ky,0,0)\) のようなせん断場でも、

\[
\nabla\times\mathbf{A}=(0,0,-k)
\]

となります。rotは見た目ではなく局所的な循環を測っています。

手計算しておきたい3つの練習問題

gradの練習

\[
V(x,y,z)=x^2+yz
\]

なら、

\[
\frac{\partial V}{\partial x}=2x,\qquad
\frac{\partial V}{\partial y}=z,\qquad
\frac{\partial V}{\partial z}=y
\]

なので、

\[
\boxed{\nabla V=(2x,z,y)}
\]

です。

divの練習

\[
\mathbf{A}=(x^2,xy,z^2)
\]

なら、

\[
\nabla\cdot\mathbf{A}
=\frac{\partial x^2}{\partial x}
+\frac{\partial(xy)}{\partial y}
+\frac{\partial z^2}{\partial z}
\]
\[
=2x+x+2z
\]

したがって、

\[
\boxed{\nabla\cdot\mathbf{A}=3x+2z}
\]

です。

rotの練習

\[
\mathbf{A}=(0,0,xy)
\]

について、

\[
(\nabla\times\mathbf{A})_x
=\frac{\partial(xy)}{\partial y}=x
\]
\[
(\nabla\times\mathbf{A})_y
=-\frac{\partial(xy)}{\partial x}=-y
\]
\[
(\nabla\times\mathbf{A})_z=0
\]

なので、

\[
\boxed{\nabla\times\mathbf{A}=(x,-y,0)}
\]

です。

直交座標で意味を理解してから円筒座標・球座標へ

点電荷では球座標、無限に長い直線電流では円筒座標が便利なので、電磁気学では別の座標系のgrad・div・rotも登場します。

しかし最初からすべての公式を暗記するより、直交座標で「grad=最急変化」「div=湧き出し」「rot=循環」という意味を理解する方が重要です。

円筒座標や球座標で式が複雑になる大きな理由は、場所によって座標の基底ベクトルそのものの向きが変化するためです。演算の物理的意味が変わるわけではありません。

まとめ:ベクトル演算はマクスウェル方程式を読むための言語

電磁気学で使うベクトル演算は、最初は記号の多さに圧倒されます。しかし、それぞれが調べているものは明確です。

gradは、スカラー場がどちらへどれだけ急に増えるかを表します。

\[
\mathbf{E}=-\nabla V
\]

によって電位と電場を結びます。

divは、ベクトル場がその場所からどれだけ湧き出しているかを表します。

\[
\nabla\cdot\mathbf{E}=\frac{\rho}{\varepsilon_0}
\]

は電荷が電場の源であることを局所的に表します。

rotは、ベクトル場がその場所の周囲でどれだけ循環しているかを表します。

\[
\nabla\times\mathbf{E}=-\frac{\partial\mathbf{B}}{\partial t}
\]

は、時間変化する磁場が循環する電場を作ることを示しています。

さらにガウスの定理はdivと閉曲面を通る総フラックスを、ストークスの定理はrotと閉曲線に沿う総循環を結びます。

ベクトル解析は、電磁気学の前に仕方なく覚える数学ではありません。電場や磁場が空間でどう振る舞うかを記述するための言語です。

まずは、

\[
\mathbf{A}=(x,y,z)
\]

と、

\[
\mathbf{A}=(-y,x,0)
\]

についてdivとrotを自分でも計算してみると、湧き出しと循環が別の性質であることを実感しやすくなります。

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メーカー勤務のエンジニアです。 自分の趣味である、「電気回路」、「ガジェット」「株式投資」、「Python」に関する記事をつらつらと書いています

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