【電磁気】スカラー場の 勾配 について

今回はベクトル場の勾配について説明していきます。

既知の方が多いと思いますが、非常に大事な概念ですのでぜひ復習してみてください。

スカラーとベクトルの違い

まずは初歩的なところから始めます。ベクトルの説明をする際は、まずスカラーとの違いを理解することが大切です。下図にスカラー場とベクトル場のイメージ図を示します。

まずはスカラーについて説明します。スカラーとは、「大きさ」を表すものになります。この図は、Zの大きさを色で表現しています。青色に近いほど小さい値を示し、赤色に近いほど大きい値になります。スカラーとは、「値の大きさのみ」わかるものになります。

続いて、ベクトルについて説明します。ベクトルは、「大きさと方向」を表します。
すなわち、スカラーに「方向」を持たせたものです。例を右下図に示しています。これは、$-1<X<1,-1<Y<1$の範囲で座標を90度反時計回りに回転させる行列をベクトルでプロットしたものになります。値の大きさが矢印の大きさに相当し、方向は矢印の向きに相当します。

電磁気学においては、スカラー場やベクトル場に対して様々な定理や公式が出てくるため、ベクトルの概念をここで抑えておきましょう。

スカラー場
ベクトル場

スカラー場の偏微分

では、ベクトル場の勾配について理解していただくために、スカラー場の偏微分に関して説明していきます。

まずは、2変数関数からなる曲面を考えていきます。例えば下図のような曲面を考えます。
(左右の図で軸が一致していないのはご留意ください。)

スカラー場
スカラー場の微小領域

局面に対する微小領域をピックアップしたものが右図になります。点Aを起点と考えた時、点Bはx方向に微小区間Δx変化した時の座標、点Dはy方向に微小区間Δy変化した時の座標、点Cはx方向にΔx、y方向にΔy変化した際の座標になっています。点Aから点Bへの変化に着目すると、

\begin{equation}
\frac{\Delta{f}}{\Delta{x}}=\frac{f(x_{0}+\Delta{x},y_{0})-f(x_{0},y_{0})}{\Delta{x}}
\end{equation}

ここで、点Aの座標を任意の点(x,y)に拡張すると、

\begin{equation}
\frac{\Delta{f}}{\Delta{x}}=\frac{f(x+\Delta{x},y)-f(x,y)}{\Delta{x}}
\end{equation}

高校数学の微分で見覚えのある形になりました。
$\Delta{x}$をゼロに限りなく近づけていくと、下式になります。

\begin{equation}
\frac{\partial{f(x,y)}}{\partial{x}}=\lim_{\Delta{x}\to 0}\frac{f(x+\Delta{x},y)-f(x,y)}{\Delta{x}}
\end{equation}

ここで、左辺に新しい記号が出てきました。
$\partial$は「ディー」や「デル」と呼びます。これは、多変数関数に関して1変数の微分をする際に用いる記号で、これを偏微分と呼びます。微分と同様に、偏微分はある方向へ変化する際の傾きを表します。

同様に点Aから点Dへの変化に着目すると、

\begin{equation}
\frac{\partial{f(x,y)}}{\partial{y}}=\lim_{\Delta{y}\to 0}\frac{f(x,y+\Delta{y})-f(x,y)}{\Delta{y}}
\end{equation}

となります。


まとめになりますが、偏微分とは、連続関数の任意点において、ある方向に変化させた際の傾きです。次節で勾配の説明に入ります。

スカラー場の 勾配

いよいよスカラー場の勾配の説明になります。
勾配はスカラーからベクトル場を作り出す数式演算になります。
前節では偏微分により、ある方向への傾きが可能となりました。では最大の傾斜を求めるにはどうすればいいでしょうか?最大の傾斜とは下図のように全方向の傾きを足し合わせる必要があります。

微小曲面の最大傾斜方向

そこで登場するのが勾配(gradもしくは$\nabla$)です。
2変数関数$f(x,y)$において、勾配とは下式で定義されます。ここで、$\mathbf{i}$、$\mathbf{j}$はそれぞれx、y方向の単位ベクトルです。

\begin{equation}
grad f=\frac{\partial{f}}{\partial{x}}\mathbf{i}+\frac{\partial{f}}{\partial{y}}\mathbf{j}
\end{equation}

この式から、勾配gradは、各軸方向の傾きをそれぞれの成分にもつベクトルになります
下図に、スカラー場に勾配のベクトルを重ねてプロットしたものを示します。
勾配は、式からわかる通り、変化量が大きければ大きいほど値が大きくなります。スカラー場を等高線図で示しておりますが、等高線の密度が高いほど変化量が大きいため矢印も大きくなっています。また、等高線とベクトル図を見てみると、等高線に対して常にベクトルが直交しています。この特徴も押さえておくとベクトルの向きをイメージしやすいかと思います。

次に、余談ですが、全微分についても触れていきます。全微分とは、一方向ではなく、全方向の変化を加味した関数の変化量を表します。下図に全方向の変化量をdhと定義します。

上図のように微小距離dx,dy,dhを考える時、dhはgradを使用して下式のように表せます

\begin{equation}
\begin{split}
dh&=\frac{\partial{f}}{\partial{x}}dx+\frac{\partial{f}}{\partial{y}}dy\\
&= \left( \begin{matrix} \frac{\partial{f}}{\partial{x}} \\ \frac{\partial{f}}{\partial{y}} \end{matrix} \right) \cdot \left( \begin{matrix} dx \\ dy \\ \end{matrix} \right) \\
&= grad f\cdot \left( \begin{matrix} dx \\ dy \\ \end{matrix} \right)
\end{split}
\end{equation}

dhをfに置き換えて考えると、全微分は下式で表すことができます。

\begin{equation}
\begin{split}
df&=grad f\cdot \left( \begin{matrix} dx \\ dy \\ \end{matrix} \right) \\
&=grad f\cdot\mathbf{r}
\end{split}
\end{equation}
ここで、$\mathbf{r}= \left( \begin{matrix} dx \\ dy \\ \end{matrix} \right) $

まとめ

今回はスカラー場の勾配について記事を書きました。勾配を理解するためには偏微分の知識が必要になるため、偏微分についても説明しました。勾配は、スカラー場からベクトル場を作り出すツールであることを覚えていただければと思います。

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メーカー勤務のエンジニアです。 自分の趣味である、「電気回路」、「ガジェット」「株式投資」、「Python」に関する記事をつらつらと書いています