5G技術の進化と将来展望: 未来の通信革命を探る

今回は5G技術の将来展望について説明したいと思います。
2020年あたりから本格的に5G通信が普及し始めましたが、今のところ5Gの恩恵を受けている感じはしないですよね。5Gが本領を発揮した際、どのような事が期待されるのかをこの記事で紹介していけたらと思います!

5G 技術について

5Gの基本概念

5G技術は、第5世代移動通信規格であり、前の4G(LTE)よりも高いデータ転送速度を実現できます。また、低遅延であることも強みであり、マルチデバイス接続技術も使用可能です。
それぞれの特徴を下記に示します。

高いデータ転送速度

5Gは高い周波数・広帯域を使用していることから大量のデータを高速に伝送できます。

高速に伝送できるのは高い周波数だからです。周波数が高いと、単位時間あたりの波の振動回数が増えます。電波は波の振動をキャリア(伝搬役)として、振幅や位相を変調することにより情報を伝達するため、単位時間あたりの情報量が増える、すなわち高速データ伝送ができると言えます。

大量のデータを扱えるのは広帯域であるからです。音の伝送を例として考えると分かりやすいです。音で考えると、「低音→低周波数、高音→高周波数」となります。周波数帯が極端に狭いと1つの音(1つのデータ)を伝えることしかできませんが、周波数帯が低い値〜高い値までカバーできていると低音〜高音までを伝送できます。

直進性が高い(障害物によわい)

高いデータ伝送ができるから、4Gの上位互換じゃん!って思う方が多いですが、メリットだけではないです。5Gは周波数が高いが故に、4Gの通信に比べて電波の直進性が強くなります
低い周波数の場合、障害物があったとしても波が回折することで障害物を迂回して電波が伝搬してくれます。音声などが分かりやすいかと思います。人が対面で話してる間に壁を設置しても壁の側面を回り込んで音が伝わるかと思います。
一方で、高い周波数の場合は障害物があった際に、波が回折せず直進してしまい、障害物に伝搬が妨げられてしまいます。光などがいい例です。光も波の一種であり、5Gよりもはるかに高い巣周波数を有しています。太陽光が人という障害物に当たることで、影ができます。影は、光が伝搬できない領域だと言えますよね。このように、高い周波数だと電波が回折しにくいため、通信エリアの確保がむずかしくなります

※ここで回折という単語が出ていますが、回折とは電波が障害物の端を通る際に進行方向が変わる現象です。回折の度合いは波長と障害物の大きさにより決まり、波長と障害物が同程度の大きさだと回折が生じ、電波が障害物の後ろを回り込んでくれます。

マルチデバイス接続技術

5Gは複数の多重接続技術を活用して、同時に多くのデバイスとの通信が可能です。

1. 空間多重技術 (Spatial Division Multiplexing, SDM)
MIMO(Multiple-Input Multiple-Output)技術が利用されています。これにより、複数の送信アンテナと複数の受信アンテナを使用することで、同じ周波数を使いつつも空間的な多重化を実現しています。MIMOは、通信の安定性やデータ転送速度の向上に寄与しています。5Gやミリは通信ではこれが重要な役目を果たします。

4Gでは(送信アンテナ✖️受信アンテナ)は(2✖️2)or(4✖️4)でしたが、5Gでは(64✖️64)や、(128✖️128)など、多重化の規模が異なります。

2. 周波数分割多重 (Frequency Division Multiplexing, FDM)
こちらは4Gでも使用されている技術です。5Gでは、異なる周波数帯域が広く活用されています。異なる周波数を使用することで、複数のデバイスが同時に通信できます。例えば、低周波数帯域は電波の伝搬特性が高いことからそれほど高速な通信が必要でない通信に割り当て(インフラ設備など)、高周波数帯域(ミリ波など)は高いデータ転送速度が必要な通信に利用されています(スマホなど)。

3. タイム分割多重 (Time Division Multiplexing, TDM)
こちらも4Gでも使用されている技術です。TDD(Time Division Duplexing)やFDD(Frequency Division Duplexing)など、異なる時間スロットや周波数帯域を使って上りと下りの通信を分ける技術が採用されています。これにより、デバイスが上りと下りを同時に行うことが可能です。

現在の5Gの状況と使われ方の紹介

  • 民間応用: 5Gは現在、世界中で商用展開が進んでいます。各国の主要都市や交通インフラで5Gサービスが提供され、一部のユーザーは高速なデータ通信が可能となっています。
    スマートフォンだけでなく、タブレット、ノートパソコン、IoTデバイスなど、様々なデバイスが5Gに対応しています。これにより、モバイル通信だけでなく、様々なデバイス間での高速通信が可能になっています。ただし、まだ5G通信対応可能な端末は少ないのが現状です。
  • 産業応用: 5Gは単なるモバイル通信だけでなく、産業の分野にも急速に普及しています。自動運転車、製造業の自動化、スマート農業など、様々な分野で5G技術が活用されています。
    自動運転は大量のデータ処理が必要となるため5Gの通信速度が求められます。おそらく4Gでやっていたら処理しきれず事故が多発するでしょう。
    スマート農業での活用例としては、各ポイントにおける温度・湿度・日射・風速などをリアルタイムでモニタし、適切な管理を可能にするほか、ドローンによる画像処理でのトラブル等の早期発見などが期待されています。
  • 急速な普及の背景: 急速な普及の背景には、高いデータ転送速度や低遅延による利便性の向上、新しいサービスやアプリケーションの開発、そして各国が5G技術の導入を推進するための政策や投資が挙げられます。

5G技術の進化

5G NR (New Radio)の進化

5G技術の根幹をなす通信インターフェイス技術です。具体的には、新しい周波数帯域の利用や波束形成技術の向上、多端末接続(MIMO)の効率化などの技術になります。
波束形成技術とは、アレーアンテナを構成し、位相制御などによりビームフォーミング制御をすることです。(前述の通り、ミリ波は直進性が強く、障害物の影響を受けやすいため、電波を飛ばす向き(ビームの向き)を可変とすることで通信エリアの拡大を狙ってます)

これらにより、より高いデータ転送速度や通信の信頼性が期待されます。

エッジコンピューティングとの統合

いくらデータ伝送効率が高くてもデータ処理に時間がかかっては台無しです。そこで、
5Gはエッジコンピューティングとの統合を強化しています。エッジコンピューティングは、データ処理をネットワークの端に近い場所で行うことで、低遅延と高い処理能力を提供します。最新の5G技術では、エッジコンピューティングとの協調が進み、リアルタイムのデータ処理が向上しています。

AIと機械学習の統合

最近chatgptなどで話題のAI技術や機械学習の技術も取り入れようとしています。
そうすることで、ネットワークの自己最適化、トラフィックの最適化、障害の早期検知などが可能になります。

5Gが変革する産業やサービスの分野

通信サービス

まずは誰もが思い浮かべるところで、通信サービス事業が挙げられます。
動画ストリーミングや大容量データの送受信などの通信が劇的に向上します。例としては、映画のダウンロードが数秒単位で終わるくらいの早さです。

また、低遅延通信が実現できることで、オンラインゲームの快適性向上や、内視鏡カメラなどを用いた遠隔治療や、完全自動運転の実現が期待されます。

スマートシティ

監視カメラの映像をもとに交通事故を瞬時に把握するような、リアルタイムの交通監視普及や、交通網の効率化が期待できます。自動車のECU が交通情報を把握して瞬時に道を切り替えて目的地に到着するようなイメージです。

産業用途

農業に関しては、ドローン、センサデバイス、自動運転トラクターにより、農業の効率化がさらに推進されていきそうです。農家不足が嘆かられる昨今ですが、これを機に農家となる人が増えてくる可能性は高いです。

ヘルスケア

医療分野では通信の高速化と安定性による、遠隔医療やテレメディシンが推進されていきそうです。患者モニタリングや手術ロボットの操作の普及によりより正確な医療が提供できる他、医療サービスのアクセスが向上し、診断や治療の迅速化が期待されます。

5Gの課題と対策

5Gの課題や懸念事項

  1. ネットワークセキュリティ:
    • 課題: 5Gネットワークは従来のネットワークよりも複雑で分散しており、これに伴って新たなセキュリティリスクが生まれています。ネットワークの多様性が増すことで、攻撃者が脆弱な点を悪用しやすくなります。
    • 懸念: ネットワークの構成要素や複数の通信プロトコルにおける脆弱性、不正アクセス、ネットワークの盗聴などが懸念されます。
  2. 端末セキュリティ:
    • 課題: 5Gは大量のデバイスが接続されるIoT環境を実現しますが、これにより、多様なデバイスからのセキュリティ脅威が生じます。また、端末の物理的な損失や盗難による情報漏えいも懸念されます。
    • 懸念: IoTデバイスが十分なセキュリティ対策を講じていない場合、これらのデバイスが攻撃者の手に落ちると、ネットワーク全体に影響を与える可能性があります。
  3. プライバシー保護:
    • 課題: 5Gは大規模なデータの収集や処理を可能にします。これにより、個人のプライバシーに関する懸念が高まります。ユーザーデータの適切な管理や保護が重要です。
    • 懸念: ロケーション情報、個人の通信パターン、健康データなどが悪意ある者によって不正にアクセスされる可能性があります。

これらの課題への対策や最新のセキュリティ技術について紹介:

  1. ネットワークセキュリティ対策:
    • 対策: ネットワークセキュリティの向上には、統合されたセキュリティアーキテクチャの導入が必要です。これには侵入検知システム(IDS)、侵入防止システム(IPS)、仮想プライベートネットワーク(VPN)などが含まれます。最新の技術として、AIを活用した挙動分析や自己修復機能を備えたセキュリティシステムが注目されています。
  2. 端末セキュリティ対策:
    • 対策: 端末セキュリティを向上させるためには、デバイスの暗号化、適切な認証手段の導入、リモートワイプなどのセキュアなリモート管理機能が必要です。また、セキュリティ更新の迅速な実施も重要です。最新の技術では、ハードウェアレベルでのセキュリティ機能や生体認証技術が活用されています。
  3. プライバシー保護対策:
    • 対策: プライバシー保護のためには、ユーザーに対する透明性やコントロールの提供が不可欠です。匿名化技術やプライバシーフォーカスのデザインが導入され、データの収集と利用に関する透明性が確保されています。最新の技術では、セキュアなデータ共有のためのブロックチェーン技術が検討されています。

6Gの展望

5Gの次は6Gですが、6Gでは何ができるのでしょうか。6Gなどの次世代通信技術は、現行の5Gよりも進化した性能や新しい応用分野が期待されています。調べた中で分かったことは、「5Gの進化」でお伝えした内容の上位互換といったところでした。一番大きく異なるのは、周波数帯です。

超高速通信

6Gでは、5Gによりも更に超高速かつ大容量の通信が期待されています。これにより、より高品質な動画ストリーミング、拡張現実(AR)、仮想現実(VR)などのエクスペリエンスが可能になります。

テラヘルツの利用

5Gよりも速い通信速度を実現するために、ミリ波ではなく、テラヘルツを使用します。
ミリ波が30~300GHzに対して、テラヘルツは100GHz~10THzになり、周波数が更に高くなります。下図に日本の電話使用状況を載せてますが、ご覧のようにテラヘルツはまだ割り当てがほとんどされていない未開拓領域です。ミリ波よりも直進性が増す分、実用へのハードルはかなり高そうですが、今後に期待しましょう。

日本の電波割り当て 参考 総務省HP https://www.tele.soumu.go.jp/j/adm/freq/search/myuse/summary/index.htm

まとめ

今回は5G技術について記事を書きました。5Gという言葉は知っていても具体的に何に使えるのか知らない方に向けた内容となっています。(有識者には、既知の内容がほとんどだったと思うのでそれほど参考にはならないと思います。。。)
今後も機になるトピックなどをできるだけ分かりやすくご紹介できればと思います!

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メーカー勤務のエンジニアです。 自分の趣味である、「電気回路」、「ガジェット」「株式投資」、「Python」に関する記事をつらつらと書いています