断熱性の高い家づくりに必要な知識

今回は、主に注文住宅時に気にするべき2つの指標について説明をしていきます。
皆さんは家づくりをする際に断熱性を気にされますか?
断熱性の高い家は外気の温度に影響を受けにくいため、快適に過ごしやすく、電気代の節約が可能なため、妥協したくない性能の一つだと言えるでしょう。

では、断熱性能はどのように定められるのでしょうか?
断熱性を判定するために、構造に対してどの程度断熱性があるかの客観的指標があります。
それが、UA値とηAC値です。

従来は5段階で断熱性能の評価をしていましたが、エネルギー消費低減の観点から、国土交通省が、今年の10月から新たに断熱等級6,7を設置予定です。(後述します)


UA値とは

UA値の定義は以下の通りです。

住宅の外皮(床、壁、窓など外気と接している各部位)から逃げる熱損失を合計し、外皮面積で割って算出する。数値が小さいほど省エネ性能が優れている。

$$UA[W/m^2 K]=\frac{単位温度差あたりの外皮総熱損失量}{外皮総面積}$$

理系の方ならともかく、文系の方には定義式を見せられてもあまりピンとこないかと思いますので、図解で説明します。
以下は家の断面図です。この家に対して、外気に触れる全ての側面がn個あったと仮定し、それぞれの面で生じる単位温度あたりの熱損失をΔQk (k=1~n)とし、それぞれの面の面積をSk (k=1~n)とします。すると、上記の式より

$$UA[W/m^2 K]=\frac{ \Delta{Q_{1}}+ \Delta Q_{2}+\cdots+ \Delta Q_{n}}{S_{1}+S_{2}+ \cdots +S_{n}}$$

UA値

ηAC値とは

ηAC値の定義は以下の通りです。

単位日射強度当たりの日射により建物内部で取得する熱量
を冷房期間で平均したもの。
値が小さいほど日射が入りにくく、遮蔽性能に優れている。

$$\etaAC[W/m^2 K]=\frac{単位日射強度当たりの総日射熱取得量}{外皮総面積}$$

図で説明をしていきます。単位日射強度当たりの総熱日射熱取得量をJとして、外気に接している面積をSとした時、$$\etaAC[W/m^2 K]=\frac{J}{S}$$
と表記できます。

ηAC値

UA値、ηAC値を小さくするためには?

それぞれの指標について説明を書きましたが値を小さくするためにどのような対策をしていけばいいでしょうか?想定される対策案を以下に列挙していきます

  • 構造の材質を木造にする
  • 壁内に断熱材を敷き詰める
  • ガラスの面積を小さくする
  • ガラスを三重+樹脂サッシに変更する

構造の材質を木造にする

材質よって熱伝導率が変化します。熱伝導率とは、ある材質に熱を加えた際、その熱が伝導する効率だと思ってください。値が高いほど熱を伝えやすいです。

以下に材料ごとの熱伝導率を記載しています

材質熱伝導率
67
0.2
ガラス1

ご覧の通り、構造体限定の話になりますが、鉄骨で建てる場合、木材に比べて約330倍も熱の伝導率が高いのです!耐震性が高い分、断熱性に関しては低下してしまうため、木造、鉄骨に関しては、耐震性・断熱性についてトレードオフの関係が出てきます。
鉄骨でも断熱等級の高い建築物があるのは、断熱材で損失を賄っているからです。(後程説明します)

壁内に断熱材を敷き詰める

断熱材を敷き詰めることにより断熱性能の向上を図ることもできます。断熱材とは、熱伝導率が極端に低く、熱移動を防ぐことが可能な材料のことです。そのため、上の表に記載されている木よりも低い熱伝導率を有しているため、断熱材の性能が家全体の断熱性能を大きく左右すると言っても過言ではありません。

断熱材の種類は大まかに分類すると4種類あります。

種類熱伝導率コスト
無機繊維~0.05
木質繊維~0.04
天然素材~0.04
発泡プラスチック~0.04

一概にどれがいいというのはありませんが、種類によって他の効果が期待できます。
例えば、防音や調湿、結露対策などです。家づくりで重視する項目がカバーできるように素材を選定していくべきですね。また、断熱材は、厚みでも影響が出てきます。もちろん、厚ければその分コストも高くなりますが、厚みに比例して断熱性能も上がります。UA値やηAC値を小さくするために断熱材の厚みを惜しまない方が良いかと思います。

ガラスの面積を小さくする

ガラスは木材と同程度の熱伝導率ですが、外壁と面している素材の中で一番厚みが薄い材料です。断熱材のコラムでお伝えした通り、断熱性能は厚みによる影響も受けるため、ガラス程度の厚さだとUA値、ηAC値が高くなる要因となり得ます。そのため、窓の面積を小さくすることで外皮総熱損失量を低減し、UA値、ηAC値の増加を抑えられます。

ガラスを三重+樹脂サッシにする

どうしてもガラス面積を多くしたい場合は、ガラスの構造と、サッシの素材を選定することにより断熱性能を確保することもできます。(コストアップにはなりますが)
まず構造についてですが、ガラス層を厚くすることで断熱性能が上がります。
多くのハウスメーカは、標準が二重ガラスになっているかと思います。皆さん二重ガラスで満足されて、その他のオプションは深掘りしない方が多いようですが、ほとんどの場合、オプションで三重ガラスに変更可能です!

サッシについてですが、ハウスメーカのほとんどが標準で樹脂アルミ複合サッシを採用しているようです。アルミ素材を使っていることでアルミ部分が熱伝導率が高くなり、結果としてUA値、çが高くなってしまいます。サッシについては標準以外取り扱いがないところもありますが、一部ハウスメーカではオプションで樹脂サッシに変更可能です。

22年10月以降の断熱等級について

2025年の省エネ基準適合義務化に向けて、2022年10月から断熱等級に新たな等級が追加されます。それが断熱等級6, 7です。

以下に各断熱等級別のUA値、ηAC値を示します。地域区分により基準値が異なるため、地域区分も載せておきますのでご自身の地域がどれに該当するかご確認お願いします。

参考URL マグ・イゾベール株式会社 https://www.isover.co.jp/news/2020-11-26

まとめ

今回は断熱性の高い家づくりをするために最低限知って頂きたい知識について書いていきました。「営業マンが断熱性が高いから」と抽象的な言葉で納得しないように、見積もり・設計の際にUA値とηAC値を毎回Kさんしてもらうようにしましょう。ただし、計算上と実際の数値は異なるためお金を払ってでも着工中の測定をしてもらうようにしましょう。

もしも計算値と比較して悪化している場合、断熱材の追加等で対応してもらえるため、実測することをお勧めします。

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メーカー勤務のエンジニアです。 自分の趣味である、「電気回路」、「ガジェット」「株式投資」、「Python」に関する記事をつらつらと書いています