Class と継承を使いこなそう！

この記事では、Python のオブジェクト指向プログラミング（OOP）の基本である「Class（クラス）」と「継承（Inheritance）」について、初心者にもイメージしやすいように解説します。実際のコード例を交えながら学んでいきましょう。

1. オブジェクト指向プログラミング（OOP）とは？

まずはオブジェクト指向プログラミング(OOP) の基本概念から説明します。

オブジェクト：データ（属性）と処理（メソッド）をまとめたもの。
クラス：オブジェクトの設計図。どんな属性・メソッドを持つかを定義する。
インスタンス：クラスから生成された実体（オブジェクト）。

よりイメージしやすいように、レシピに例えてみると

クラス＝レシピ（どんな材料が必要で、どう調理するか）
インスタンス＝実際に作った料理

レシピがあれば、同じ手順で何度でも料理を再現できますよね。クラスも同じく、「これを持っている・これができる」オブジェクトを何度でも作れる設計図になります。

2. Python でのクラス定義の基本

Python で最もシンプルなクラスの書き方を見てみましょう。

class Dog:
    # クラス変数（すべてのインスタンスで共有）
    species = "Canis familiaris"

    def __init__(self, name, age):
        # インスタンス変数（個々のインスタンス固有）
        self.name = name
        self.age = age

    def bark(self):
        print(f"{self.name} says: ワンワン!")

__init__：インスタンス生成時に呼ばれる初期化メソッド。
self：インスタンス自身を指すキーワード。必ず第一引数に書きます。

インスタンス化してみよう

dog1 = Dog("ポチ", 3)
dog2 = Dog("ハチ", 5)

print(dog1.name, dog1.age)  # ポチ 3
print(dog2.name, dog2.age)  # ハチ 5

dog1.bark()  # ポチ says: ワンワン!
dog2.bark()  # ハチ says: ワンワン!

3. 継承（Inheritance)

ここからが本題の「継承」です。
継承とは、あるクラス（親クラス／スーパークラス）の機能を引き継いで、新しいクラス（子クラス／サブクラス）を作る仕組みです。

こちらも具体例でイメージをしましょう。

親クラス：自動車

エンジン、ホイール、ハンドル、といった基本的な部品と機能を持つ

子クラス：スポーツカー

「自動車」をベースに「ターボエンジン」や「低重心シャーシ」などを追加

親クラスに書いた処理・属性はそのまま使え、必要に応じて追加や上書き（オーバーライド）も可能です。

4. Python での継承の書き方

先ほどの Dog クラスを親として、GuardDog（番犬）という子クラスを作ってみましょう。

class GuardDog(Dog):
    def __init__(self, name, age, guard_area):
        # super() で親クラスの __init__ を呼び出す
        super().__init__(name, age)
        self.guard_area = guard_area  # 子クラス独自の属性

    # 親クラスの bark をオーバーライド（上書き）
    def bark(self):
        print(f"{self.name} ({self.guard_area}) says: ガルルル…")

    # 子クラス独自のメソッド
    def guard(self):
        print(f"{self.name} is guarding {self.guard_area}!")

class GuardDog(Dog): で継承を指定。
super().__init__(…) で親クラスの初期化処理を呼び出します。
必要に応じてメソッドを上書き（オーバーライド）したり、独自メソッドを追加できます。

動かしてみる

gd = GuardDog("タロー", 4, "倉庫")
print(gd.species)   # Canis familiaris（親から継承したクラス変数）
gd.bark()            # タロー (倉庫) says: ガルルル…
gd.guard()           # タロー is guarding 倉庫!

5. 継承のメリット

コードの再利用
親クラスに書いた機能をそのまま使えるので、同じ処理を何度も書かずに済みます。
保守性の向上
基本機能は親クラスにまとめておくことで、バグ修正や機能追加を一か所で済ませられます。
拡張しやすい設計
子クラスで必要な機能だけ追加・上書きすればよいので、新しい要件に柔軟に対応できます。

6. 継承時の注意点

多重継承（複数の親クラスを持つ）は強力ですが、メソッド解決順序（MRO）が複雑になりやすいので慎重に。
オーバーライドしすぎない：親クラスと子クラスで同じメソッド名を多用すると、どの処理が呼ばれるか分かりにくくなることがあります。
super() の使い方：必ず正しい引数で呼び出し、親クラスの初期化を飛ばさないように注意しましょう。

7. 多重継承の例（応用編）

class Flyable:
    def fly(self):
        print("飛んでいます！")

class Swimmable:
    def swim(self):
        print("泳いでいます！")

# 多重継承クラス
class Duck(Flyable, Swimmable):
    def quack(self):
        print("ガーガー")

d = Duck()
d.quack()  # ガーガー
d.fly()    # 飛んでいます！
d.swim()   # 泳いでいます！

ポイント：Python の MRO によって、Duck がどのクラスからどのメソッドを取得するかが決まります。多重継承は便利ですが、複雑化しやすい点に注意しましょう。

8. 実践的な設計例：ゲームキャラクター

例えば RPG のキャラクターを設計する場合を考えてみます。

class Character:
    def __init__(self, name, hp):
        self.name = name
        self.hp = hp

    def attack(self, target):
        print(f"{self.name} attacks {target.name}!")

class Warrior(Character):
    def __init__(self, name, hp, strength):
        super().__init__(name, hp)
        self.strength = strength

    def attack(self, target):
        damage = self.strength * 2
        target.hp -= damage
        print(f"{self.name} の強力な攻撃！ {target.name} に {damage} ダメージ！")

class Mage(Character):
    def __init__(self, name, hp, mp):
        super().__init__(name, hp)
        self.mp = mp

    def cast_spell(self, target):
        cost = 10
        if self.mp >= cost:
            self.mp -= cost
            target.hp -= 15
            print(f"{self.name} の魔法！ {target.name} に 15 ダメージ！")
        else:
            print("MPが足りません！")