ストークスの定理 をわかりやすく説明してみた

以前はガウスの発散定理について解説をしましたが、今回はストークスの定理のついて解説していきます。↓ガウスの発散定理についての記事です。

ストークスの定理とは

ベクトル場$\mathbf{A}=(A_{x}(x,y,z),A_{y}(x,y,z),A_{z}(x,y,z))$について、閉曲線Cで囲まれた面積Sの領域について、以下の式が成り立ちます。なお、ベクトル\mathbf{n}は閉曲面における法線方向です(今回は、簡単のため、法線方向はZ方向としています)

【ストークスの定理】
$$\iint (\nabla\times\mathbf{A}) \cdot \mathbf{\hat{n}}dS=\oint \mathbf{A} \cdot d \mathbf{r}$$

上の定理について簡単に説明をすると、「ベクトル場が定義された領域のおいて、
面積積分を線積分に置換可能」といった内容になります。

わかりやすいイメージ

ガウスの発散定理についても同様のことが言えますが、定理はシンプルなイメージで覚えることをお勧めします。暗記ではなく、イメージで覚えることによって数式を導けるようになるのが理想的です。

では、ストークスの定理について、わかりやすいイメージを示します。

ストークスの定理の左辺についてですが、これは、下図に示すような微小面積dSについて、それぞれベクトルの回転をとり、法線方向を取り出したものの和を取り出しています。なお、回転は全て反時計周りで考えていきます。ここで注目したいことは、隣り合う微小曲面について、接している線分は向きが逆方向となるため、相殺され、微小面積の面積積分が全体の線積分と同値になります。


証明

ではストークスの定理を証明していきます。厳密な証明は骨が折れるため、今回はベクトル場がZ方向にない場合で考えていきます。

まず、周回積分の数式において、以下の式が成り立ちます。これは、上図の内容を表しており、閉曲面の線積分は、曲面をN個に分割して、それぞれの線積分を足し合わせたものと同値になると言った内容です。

$$ \oint_C \mathbf{A} \cdot d \mathbf{r} = \sum_{i} \oint_{Ci} \mathbf{A} \cdot d \mathbf{r} $$

右辺のΣ内の式について考えていきます。微小面積において、各辺を下図のようにC1~C4となづけます。すると、微小面積内の周回積分は以下のように細分化できます。

$$\oint_{Ci} \mathbf{A} \cdot d \mathbf{r}=\int_{C1}\mathbf{A} \cdot d \mathbf{r}+\int_{C2}\mathbf{A} \cdot d \mathbf{r}+\int_{C3}\mathbf{A} \cdot d \mathbf{r}+\int_{C4}\mathbf{A} \cdot d \mathbf{r}$$

C1の経路について考えていきます。
微小経路C1において、ベクトル場が一様であると仮定します。rは反時計回りの方向として考えていくと、C1の経路では$d \mathbf{r}=(dx,0,0)$となります。

\begin{align}
\int_{C1}\mathbf{A} \cdot d \mathbf{r}=(A_{x}(x,y,z),A_{y}(x,y,z),A_{z}(x,y,z)) \cdot (1,0,0)=A_{x}(x,y,z)dx
\end{align}

同様に、C2の経路は

\begin{align}
\int_{C2}\mathbf{A} \cdot d \mathbf{r}=(A_{x}(x+\Delta x,y,z),A_{y}(x+\Delta x,y,z),A_{z}(x+\Delta x,y,z)) \cdot (0,dy,0)=A_{y}(x+\Delta x,y,z)dy
\end{align}

C3の経路は

\begin{align}\int_{C3}\mathbf{A} \cdot d \mathbf{r}=(A_{x}(x,y+\Delta y,z),A_{y}(x,y+\Delta y,z),A_{z}(x,y+\Delta y,z)) \cdot (-dx,0,0)=A_{x}(x,y+\Delta y,z)dx\end{align}


C4の経路は

\begin{align}\int_{C4}\mathbf{A} \cdot d \mathbf{r}=(A_{x}(x,y+\Delta y,z),A_{y}(x,y+\Delta y,z),A_{z}(x,y+\Delta y,z)) \cdot (0,-dy,0)=-A_{y}(x,y,z)dy\end{align}

煩雑になってしまいましたが、上記の式をまとめると、

$$\begin{eqnarray}
\oint_{Ci} \mathbf{A} \cdot d \mathbf{r} &=&-dx(A_{x}(x,y+\Delta y,z)-A_{x}(x,y,z))+dy(A_{y}(x+\Delta x,y,z)-A_{y}(x,y,z)) \\
&=& -dxdy \frac{\partial A_{x}}{\partial y}+dxdy \frac{\partial A_{y}}{\partial x}\\
&=& dxdy( \frac{\partial A_{y}}{\partial x} -\frac{\partial A_{x}}{\partial y})\\
&=& \nabla \times \mathbf{A} \cdot \mathbf{n} dS
\end{eqnarray}$$

これを元の式に代入すると、

$$\begin{eqnarray}
\oint_C \mathbf{A} \cdot d \mathbf{r} &=& \sum_{i} \oint_{Ci} \mathbf{A} \cdot d \mathbf{r} \\
&=& \sum_{i} (\nabla \times \mathbf{A}) \cdot \mathbf{n} dS\\
&=& \iint (\nabla \times \mathbf{A}) \cdot \mathbf{n} dS
\end{eqnarray}$$




まとめ

今回は、電磁気学の初歩的な内容であるストークスの定理についてできるだけわかりやすく解説しました。次回はマクスウェルの方程式について解説していこうと思います。

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メーカー勤務のエンジニアです。 自分の趣味である、「電気回路」、「ガジェット」「株式投資」、「Python」に関する記事をつらつらと書いています