ガウスの発散定理を分かりやすく解説してみた

大学1年の電磁気学で一番始めに習う定理ではないでしょうか。こちらの定理は丸暗記して中間テストや期末テストだけ凌ぎ切るかたが多い印象ですが、イメージさえ定着すれば公式を覚えずとも自力で導出することができます。なので、この記事を通してイメージできるようになっていただけたらと思います!

ガウスの発散定理とは

まずこの定理について説明をしていきます。この定理は

「あるベクトルについて、閉曲面(表面積S, 体積V)からの湧き出し量を考えた時、表面積で計算した場合も体積で計算した場合も同じ」ということです。
これから、下図のイメージをもとに上記の内容を証明していきます。

ベクトル場と立方体の関係

表面積からベクトルの湧出し(流入・流出)を計算

まずは、立方体の表面積からベクトルの湧出しを計算します。下図の黄色ハッチング部分の微小面積を例として考えていきます。右図はY軸上から見たXZ平面にある微小面積部分(dS)を示してます。真横から見る形となるので黄色い部分が潰れているようなイメージです。ここで、ベクトル場$\mathbf{A} =(A_{x}, A_{y}, A_{z})$とします。$A_{x}, A_{y}, A_{z}$はそれぞれx,y,zの3変数関数です。

ベクトル場$\mathbf{A}$について、ハッチング面から外に出ていくベクトル成分ははハッチング面の法線成分のみとなるため、湧出し量は$\mathbf{A} \cdot \mathbf{\hat{n}}dS$となります。今は、1面の微小面積において湧出し量を計算しましたが、この立方体からの湧出しは、立方体全ての表面で計算しなければなりません。そこで、全体の湧き出し量は先ほどの微小面積での湧き出し量を表面積について面積積分することで算出可能です。立方体表面の湧き出し量は以下の式となります。

$立方体表面の湧出し量=\iint\mathbf{A} \cdot \mathbf{\hat{n}}dS$

これで表面積の湧き出し量算出は終了です。

体積からベクトルの湧出しを計算

次は、微小体積からこの立方体の湧出しを考えていきます。先ほどの説明と重複することがあります。同じような図になりますが、今回は立方体の中から微小体積を取り出します。右側の図は、微小体積についてのXZ平面図になります。

x軸方向について考えていきます。x軸方向では、2つの面が湧出しに関わってきます。
まずは左側から考えていくと、表面積の計算時と同様に、法線ベクトル成分を抽出し、微小面積$dS_{1}$を掛け合わせていきます。
すると、$dS_{1}$の湧出し=$$\mathbf{A} \cdot \mathbf{\hat{n}}dS_{1}=-A_{x}(x, y, z)$$とかけます。

次に、右側の$dS_{2}$について考えていきます。同様に、法線ベクトル成分を抽出して、微小面積$dS_{2}$を掛け合わせていくと、
$dS_{2}$の湧き出し=$\mathbf{A} \cdot \mathbf{\hat{n}}dS_{2}=A_{x}(x+dx, y, z)dydz$となります。

上記二つの湧き出しの和により、

$$
\begin{eqnarray}x方向の湧き&=&A_{x}(x+dx, y, z)dydz-A_{x}(x, y, z)dydz\\
&=&\frac{\partial A_{x}}{\partial x} dxdydz\\
&=&\frac{\partial A_{x}}{\partial x} dV
\end{eqnarray}$$



y軸方向、z軸方向についても同様に計算すると、


$y方向の湧き出し=\frac{\partial A_{y}}{\partial y} dV$
$z方向の湧き出し=\frac{\partial A_{z}}{\partial z} dV$

微小体積の湧出しは、3軸方向の湧出しの和なので

$$\begin{eqnarray}
dVの湧き出し&=&(\frac{\partial A_{x}}{\partial x}+\frac{\partial A_{y}}{\partial y}+\frac{\partial A_{z}}{\partial z}) dV\\
&=& \nabla \cdot \mathbf{A} dV
\end{eqnarray}$$

さて、あともう一歩です。今までの計算は微小体積について計算した結果でした。
元の大きさの立方体を考慮していく必要がありますよね。イメージとしては下図になります。

微小体積→全体の体積を考慮

全体の体積を考慮するということは、やはり積分ですよね。今回は体積積分になります。
すなわち、

$全体の湧き出し= \iiint \nabla \cdot \mathbf{A} dV $

ここで、隣り合う微小体積について考えていきます。
分かりやすく考えるために、二次元で検討していきましょう。
今、4つの面がくっついている状況を考えます。先ほどの話を面に適用すると、微小体積(1つのブロック)を積分していくのですが、隣合う微小体積について、接している箇所は法線ベクトルが逆方向、考えるベクトル場は同じなので、下図の赤丸を囲ったところは法線ベクトルとベクトル場の内積は、符号が逆で、絶対値が等しいため、積分していく(足していく)と0となります。下図の場合、赤丸で囲った領域は積分する際に全て打ち消されてゼロとなってしまいます。つまり体積積分は、表面積(外側の面)について、ベクトル場と法線ベクトルの内積をとったものと同値になります。これがガウスの発散定理です!式でかくと、

$ \iiint \nabla \cdot \mathbf{A} dV =\iint\mathbf{A} \cdot \mathbf{\hat{n}}dS $

まとめ

今回はガウスの発散定理について説明をしました。電磁気を学ぶ人にとっては理解必至の内容ですのでこれを機にぜひ導出できるようにしましょう!

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メーカー勤務のエンジニアです。 自分の趣味である、「電気回路」、「ガジェット」「株式投資」、「Python」に関する記事をつらつらと書いています