電磁気におけるベクトルの 回転 とは?

rotation

ベクトルは “回る” ?

「ベクトルが回るって、どういうこと?」
電磁気の勉強を始めたとき、こんな疑問を持ったことはないでしょうか。

高校まではベクトルといえば、矢印の長さと向きを表しますよね。数学や物理で習った直線的な「力」や「速度」のように、ある一方向を示すものでした。大学では、電磁気学の分野において電場や磁場といった“ベクトル場”が出てくると、話が一気に複雑になります。

その中でも特に混乱しがちなのが、ベクトルの発散と、ベクトルの 回転 という概念です。

ベクトルが回るの?

私たちがよく聞く「回転」という言葉は、コマが回るとか、ドアノブを回すといった、物体の物理的な動きを指します。では「ベクトルが回る」とは一体どういうことなのでしょう?

たとえば、水が流れている川をイメージしましょう。まっすぐ流れているところでは、水の速度ベクトルは同じ方向を向いています。でも、岩にぶつかって渦ができる場所では、水の流れがぐるぐると回っています。

この「渦の強さ」や「回り方の向き」を数式で表すのが、ベクトルの 回転 になります。

回転 はなぜ重要なの?

電場や磁場は、空間の至る所にベクトルとして存在します。しかも、その向きや強さは時間の関数として表されることがほとんどです。
こうした「場の構造」を調べるとき、「どれくらいベクトルが回り込んでいるか(渦を作っているか)」という情報はとても重要です。

実際、マクスウェル方程式の中には「 回転 」を表す記号(∇×)が頻繁に登場します。たとえば、

\begin{align}
\boldsymbol{\nabla} \times \boldsymbol{E} &= -\frac{\partial \boldsymbol{B}}{\partial t}\tag{1}\\
\end{align}

これは、「時間的に変化する磁場は、空間的にぐるっと回る電場を生み出す」という意味です。
つまり、ベクトルが“回る”現象は、電磁気学の根幹にあるのです。

身近な例で考えてみる

イメージを定着させるためにも身近な例で考えてみましょう。磁石における磁力線はまさに回転を表していそうですよね。磁場は磁石のN極からS極に向かって円を描くようにして回り込みますよね。まさに磁場(磁界)が回転しているんですね。

また、別の例で考えてみると、中学生の時にコイルの中に磁石を突っ込む実験をしたかと思います。まさに式(1)の実験に相当しますね。コイルの中の磁界が変化することによりコイルないに電界のループが発生してコイルに電流が流れます。

このような形ですでに触れてきた身の回りのものにもベクトルの回転という概念は使用されています。

ベクトル場の 回転 とは何か?

前章で「ベクトルが回る」とは何なのかを直感的に紹介しました。
ここからはもう一歩踏み込んで、数学的な意味や具体的な定義について見ていきましょう。

ベクトル場 $\mathbf{A}(x,y,z) = (A_x, A_y, A_z)$ の「回転」(Curl)は、ナブラ演算子とベクトル場の外積で定義され、

$$
\nabla \times \mathbf{A}
= \begin{vmatrix}
\mathbf{e}_x & \mathbf{e}_y & \mathbf{e}_z \\
\displaystyle \frac{\partial}{\partial x} & \displaystyle \frac{\partial}{\partial y} & \displaystyle \frac{\partial}{\partial z} \\
A_x & A_y & A_z
\end{vmatrix}
\tag{2}
$$

と表せます。展開すると各成分は:

$$
(\nabla\times\mathbf{A})_x = \frac{\partial A_z}{\partial y} – \frac{\partial A_y}{\partial z},
\
(\nabla\times\mathbf{A})_y = \frac{\partial A_x}{\partial z} – \frac{\partial A_z}{\partial x},
\
(\nabla\times\mathbf{A})_z = \frac{\partial A_y}{\partial x} – \frac{\partial A_x}{\partial y}
$$

ここで、各成分はそれぞれの平面内での回転の度合いを示しています。


ストークスの定理と循環

ベクトル場の回転は、局所的な小さなループに沿った線積分(循環)と関係しています。微小な面片 $d\mathbf{S}$ を貫く回転の成分は、

$$
(\nabla\times\mathbf{A})\cdot d\mathbf{S} \approx \oint_{\partial S} \mathbf{A}\cdot d\boldsymbol{\ell}
$$

という関係が成り立ち、これを面全体で積分すると「ストークスの定理」が得られます:

$$
\iint_{S}(\nabla\times \mathbf{A})\cdot d\mathbf{S} = \oint_{\partial S} \mathbf{A}\cdot d\boldsymbol{\ell}
$$


具体例:均一な渦ベクトル場

例として平面上の場

$$
\mathbf{A}(x,y) = (-y,\,x,\,0)
$$

を考えます。このベクトル場は原点を中心に反時計回りに回っており、その回転を計算すると:

$$
(\nabla\times \mathbf{A})_z = \frac{\partial A_y}{\partial x} – \frac{\partial A_x}{\partial y} = 1 – (-1) = 2
$$

他の成分は 0 なので、

$$
\nabla\times \mathbf{A} = (0,\,0,\,2)
$$

となり、一定の渦強度 2 を持つことがわかります。


電磁気学への応用

  • ファラデーの法則

$$
\nabla \times \mathbf{E} = -\frac{\partial \mathbf{B}}{\partial t}
$$

時間変化する磁場が電場に渦を生じさせる。

  • アンペール–マクスウェルの法則

$$
\nabla \times \mathbf{B} = \mu_0 \mathbf{J} + \mu_0 \varepsilon_0 \frac{\partial \mathbf{E}}{\partial t}
$$

電流と時間変化する電場が磁場に回転をもたらす。


まとめ

  1. 回転(Curl) はベクトル場の局所的な「渦」を表す量。
  2. 成分表示やストークスの定理により、回転と循環の関係が明確になる。
  3. マクスウェル方程式は回転演算子 $\nabla\times$ を通じて電磁場の本質を示す。

ベクトル場の回転を理解することで、電磁気学における場の振る舞いをより直感的かつ数学的に把握できるようになります。ぜひ演習問題で自分の手を動かしながら、回転の概念を確実にものにしてください!

shota_py

メーカー勤務のエンジニアです。 自分の趣味である、「電気回路」、「ガジェット」「株式投資」、「Python」に関する記事をつらつらと書いています

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